関係の脆さ

　　　関係の脆さ　　　　　　　　　　　　vol.1

　普段から愛用している化粧品メーカーの3色入りのチークが見事に割れて外れてしまった。
　落としてもいないし、砕ける強さでブラシを使った訳でもない。
　どうしたことかと思いながら使い始めて間がなかったので、どうしても諦めきれずに
　もう一度同じものを購入した。
　ところがどうだろう・・・またしても同じ部分から外れて砕けてしまった。
　どうにも納得が行かない私は思い切ってメーカーに商品の写真を添付したメールを送ることにした。
　いつもこうした対応をしているのではなくどちらかといえば私は殆どの場合、
　こうした行動をとらないのが常だ。
　問い合わせて「無視される」という経験を学生時代に数度していたからである。
　苛立ちが深まるだけで何の効果もないのだから、益々自分が愚かに思えたものだ（笑）
　今回も大した期待もなくイライラを発散する気持ち半分、メーカーの「ユーザーからの苦情の対応」を
　試す気持ち半分で、「困っていることがある」と言う旨のメールを送りつけたのだ。
　今回もどうせ・・・と自嘲しながら待っていると、なんと2,3日で返信があった。
　状況を問いながらも、即刻交換させていただきたいという申し出であった。
　迅速な対応に慣れていない私は少しびっくりして、事情を更に詳しく話し、どの店舗で
　購入したのか、使用状況についても、出来るだけ細かく説明した。
　すると今度は商品を店で受け取るのがいいか、それとも直接家に届けるのがいいかなどの
　受け取り方法についてと、本来なら同じ商品を2つ送るところだが、希望があれば
　別の色でも構わないので意見を聞きたいというではないか。
　何と気が効いている事だろう!(これって普通?)
　担当者が休暇を取る期間を含めて、一週間ほどで希望の商品が届けられた。
　商品はとても慎重に、宝物のように梱包されていた。
　新製品のサンプルも同封されており、返品のための準備も全て整えられていた。
　いいことなしの苦情相談は、今回のメーカーのおかげでとてもイイコトのように思え、気持ちもスッキリした。
　そういえば子供がまだ赤ちゃんの頃にオムツの繊維に含まれている黒いものは何かと、
　オムツ一枚を同封して問い合わせたら、特に問題になるものではなかった、という説明と共に
　オムツが1パック届いたことがあった。
　そう考えると、私が学生の頃に味わったことのほうが稀なのかも知れない。
　外食をする際によく味わう「店員の態度の拙さ」。
　だからこそ、いい雰囲気を提供してくれた店の存在がひときわ光を放つのだ。

　ヒトとヒトとの関係は、一旦築いてしまえば永遠･･･というわけには行かない。
　一緒に暮らしていても、仲のいい友達であっても一瞬一瞬を大切にしなければ
　信頼関係はあっという間に崩れてしまう「脆さ」を含んでいるのだ。
　その危うい力関係はモノに対しても同じだ。愛着が持てなくなれば扱いがぞんざいになる。
　一度きりの人生を大切に楽しみたいなら、すべてにおいて細やかな心遣いが必要なのかもしれない。

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